本物のカテーテルと危ないものを見分けるには
大きな通販サイトで「カテーテル」を検索すると、袋単位で売られている透明なプラスチックの管が混じって出てくることがあります。安く、数日で届き、見た目はそれらしく見えます。
このページは、そうしたものと本物とを見分けるためのページです。何も売らず、どの店にもリンクしません。法令が何を定め、添付文書に何が書かれているかを示し、商品ページを自分で読めるようにします。
書き方について、ひとつ約束があります。当サイトは、名前を挙げた製品について自分の言葉では何も述べません。製品名がここに出てくる場合、読めるのはメーカー自身の添付文書か規制当局の言葉の引用であり、原文をご自身で確かめられます。
カテーテルは定義のある機器です
導尿カテーテルは、ただの管ではありません。日本では、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)が「医療機器」を定義しています。
この法律で「医療機器」とは、人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であつて、政令で定めるものをいう。
同じ法律は医療機器を三つに分けています。不具合が生じたときに生命や健康に重大な影響を与えるおそれのある「高度管理医療機器」、[薬機法] それ以外で生命や健康に影響を与えるおそれのある「管理医療機器」、[薬機法] そしてそのおそれがほとんどない「一般医療機器」です。[薬機法] 政令の別表には「医療用嘴管及び体液誘導管」という類別があり、導尿カテーテルの添付文書はこの類別を表示しています。[薬機法施行令]
間欠自己導尿(ISC)に使うカテーテルがこのどれに当たるかは、添付文書の一行目に書いてあります。医薬品医療機器総合機構(PMDA)が公開している、ある使い捨て型カテーテルの添付文書は、冒頭でこう名乗っています。
添付文書や規制当局はこう述べています
機械器具51 医療用嘴管及び体液誘導管 管理医療機器 間欠泌尿器用カテーテル JMDN36125000
区分は「管理医療機器」、一般的名称は「間欠泌尿器用カテーテル」です。同じ添付文書は、この製品が患者自身による間欠自己導尿に使えると述べています。[PMDA 添付文書] 繰り返し使う型のカテーテルの添付文書も、同じ一般的名称と同じ区分を表示しています。[PMDA 添付文書] この二つの添付文書では、使い捨てか再利用かで区分は変わっていません。
欧州泌尿器科看護協会(EAUN)が書いている指針は、人が実際に手にするものを描写しています。そのまま使える型について、こう書いています。
親水性コーティングを施した滅菌済みカテーテルは、そのまま使える製品で、ジェルがカテーテルの表面か包装の中にある。
つまり最初の印は「滅菌」の文字で、包装に書いてあります。次の二つも包装にあります。本物のカテーテルにはサイズと長さがあります。指針は、色を信用するのではなく包装からサイズを読むよう職員に求めています。
注意。色は国際的に共通だが、すべてのメーカーがこの色分けを使っているわけではない。したがって、サイズの確認には包装とコネクターを確かめる必要がある。
どちらも棚の前で決めることではありません。サイズはその人のために選ばれ、[EAUN 2025] 使い始めるときには種類、先端、長さ、サイズが記録されます。[EAUN 2025]
商品ページをこれに照らしてみてください。滅菌、サイズ、長さ、そしてそれをあなたのために選んだ人。商品ページにそのどれもなければ、その欠落が答えです。
一回より多く使うことについて、同じ指針が職員に向けて書いている助言はこうです。
臨床、リハビリテーション、長期療養の場での交差汚染を防ぐため、滅菌済みの単回使用の間欠導尿カテーテルを使うこと
最後の句を読んでください。これは病棟や介護施設のための規則で、心配されているのは、ある人のカテーテルが別の人に渡ることです。本物の印ではありません。指針は単回使用を標準としつつ、単回使用のものが手に入らない場合には再利用型のカテーテルを認めています。[EAUN 2025] 日本では再利用型は診療報酬の点数表が名指しする型のひとつで、[診療報酬点数表] 大学病院の説明にも使い捨てと並んで出てきます。[東京女子医科大学病院]
コーティングの有無も、本物かどうかの印ではありません。本物のカテーテルにも、コーティングされたものやジェルが添えられたものがあれば、コーティングのないものを別の潤滑剤と一緒に使うものもあります。[EAUN 2025] 指針が推奨しているのは、「IC」を間欠導尿の略として、こうです。
IC には、親水性コーティングのあるカテーテルか潤滑剤付きのカテーテルを使うべきである
規制を受けたメーカーのコーティングなしのカテーテルも、やはり本物です。
表示には何が書かれていなければならないか
日本では、医療機器の製造販売業者は、省令で定める例外を除き、使用上の注意などの「注意事項等情報」を、電子的な方法で公表しなければなりません。薬機法はこう定めています。
医薬品(第五十二条第二項に規定する厚生労働省令で定める医薬品を除く。以下この条及び次条において同じ。)、医療機器(第六十三条の二第二項に規定する厚生労働省令で定める医療機器を除く。以下この条及び次条において同じ。)又は再生医療等製品の製造販売業者は、医薬品、医療機器又は再生医療等製品の製造販売をするときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該医薬品、医療機器又は再生医療等製品に関する最新の論文その他により得られた知見に基づき、注意事項等情報について、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により公表しなければならない。
そして、同じ例外を除き、機器の容器や包装には、公表されたその情報にたどり着くための番号や記号が書かれていなければなりません。
医療機器(次項に規定する医療機器を除く。)は、その容器又は被包に、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて厚生労働省令で定めるものにより、第六十八条の二第一項の規定により公表された同条第二項に規定する注意事項等情報を入手するために必要な番号、記号その他の符号が記載されていなければならない。
PMDA のサイトでは、添付文書が一般的名称ごとに一覧になっていて、「間欠泌尿器用カテーテル」の一覧は、販売名、製造販売業者等、添付文書の欄で並んでいます。[PMDA] 買う側にできる確認は、これひとつです。商品ページにある販売名を PMDA のサイトで探し、その添付文書が「管理医療機器 間欠泌尿器用カテーテル」と表示しているかを見ることです。
売る側にも定めがあります。管理医療機器を業として販売しようとする者は、あらかじめ営業所ごとに、その所在地の都道府県知事に届け出なければなりません。[薬機法] 高度管理医療機器の販売には許可が要るのに対して、管理医療機器は届出です。[薬機法] ドラッグストアや通販サイトに並ぶことがあるとしても、どの種類の店で売られているかを述べた日本の一次資料は見つかりませんでした。
大事なのは、本物の機器は機器として名乗っているということです。PMDA のサイトに添付文書がなく、管理医療機器の表示もない商品ページは、薬機法が定義するものの外にあります。このページが言えるのはそこまでです。
ここまではすべて本物を見分けるためのもので、手に入れる方法ではありません。このページのすべての確認を通った商品ページでも、それがあなたのために選ばれたわけではなく、誰かがあなたを診てサイズや種類を決めたわけでもありません。
カテーテルと一緒に検索に出てくるもの
同じ検索に、除菌シートや洗浄液のボトルが並ぶこともあります。このページはそのどれも名指ししません。理由はこうです。名前のある製品については、メーカー自身の添付文書か規制当局の文言だけを引用するのがこのページの決まりで、当サイトはそうした製品のどれについてもその文言に到達できませんでした。ラベルがなければ、何も言いません。
導尿の前に体を洗うことについて、看護の指針が求めているのは二つで、二つ目はしないことです。
尿道口は水と pH 中性の石けんで洗うこと
IC に消毒薬入りの潤滑剤を常用しないこと
石けんと水です。表面用の除菌シートは、どちらでもありません。
ジェルには一行を割く価値があります。同じ検索に、正しい種類のものが混じることもあるからです。看護の指針はこう述べています。
滅菌済みの潤滑剤は常に単回使用である。開封した包装を再び使ってはならない。
コーティングのないカテーテルを使うときは、女性でも男性でも潤滑剤を使うこと
正しいものにたどり着く道
人が検索窓に行き着くのには理由があります。頼むのは難しく、当サイト全体がその難しさについてのものです。しかし店はあなたを診ることができず、商品ページは質問に答えられません。
カテーテルの選択は、患者のアセスメント、患者の希望、制約や障害、費用対便益、費用対効果、使いやすさ、保管の問題を考慮すべきである。患者には、自分の必要に最も合う製品を選べるよう案内をすべきであり、その必要は時とともに変わりうると認識しておくべきである。
希望はその一覧に入っています。素材については、指針自身の推奨もあります。
痛みと灼熱感を減らすため、IC には PVC フリーのカテーテルを使うべきである
これは快適さについての推奨であり、尋ねてみることであって、偽物の印ではありません。規制を受けたメーカーの PVC 製カテーテルは、本物の機器です。
費用対便益も一覧にあり、指針はその費用の側を自分の数字で示しています。最も多いのは感染で、指針の略語では UTI(尿路感染症)です。[EAUN 2025] 合併症の表は影響を受ける人の割合を示していて、二つ目の数字は、膀胱の問題が神経の障害によるものではない使用者のものです。
神経因性の障害がある IC 使用者では 62%–77%、神経因性でない障害の IC 使用者では 38%–42%。
同じ表は尿道の炎症を挙げています。[EAUN 2025] 男性では、精巣上体や精巣の炎症を挙げています。[EAUN 2025] そして尿道が狭くなることを挙げていて、これは主に男性で、女性ではまれです。[EAUN 2025] この最後のものが、指針の推奨のひとつの理由です。
尿道狭窄を防ぐため、親水性コーティングのあるカテーテルを使うべきである
検尿の結果を見る前に知っておく価値のある行が、もうひとつあります。尿の中の細菌は導尿につきもので、それだけでは治療の理由になりません。
細菌尿は、導尿 1 回あたり 1%–3% の割合で生じる。無症候性の細菌尿は治療を必要としない。
すべての IC 使用者において、症状のある UTI のみを治療すること
これは医師があなたと一緒に天秤にかけることで、商品ページには書かれていません。
誰が処方するかは、国によって異なります。
IC を処方する権限をもつ医療従事者は、法域と各医療機関の方針によって異なる。
日本について当サイトが引用できるのは、泌尿器科の学会のページと、二つの大学病院のページです。日本泌尿器科学会は一般向けのページで、尿がまったく出ないときの対処として、二つの方法を名前とともに説明しています。
尿を完全に排出させたら、すぐにカテーテルを抜いてしまう方法(導尿といいます)と、しばらく尿道にカテーテルを挿入したままにする方法(尿道カテーテル留置といいます)があります。いずれにしても、後日泌尿器科専門医の診察を受け原因検索をすることが推奨されます。
自分で行う導尿を教える役目を、看護師が担っている病院があります。関西医科大学附属病院には看護師が担当する自己導尿指導外来があり、こう述べています。
ご自身の身体機能や日常生活に合わせた無理のない導尿の方法を指導します。
東京女子医科大学病院の泌尿器科は、カテーテルに使い捨てと繰り返し使用の 2 種類があると説明し、[東京女子医科大学病院] 別の病院で導尿指導を受けた人の相談も受けると書いています。
既にほかの病院で導尿指導を受けている方でも、回数や方法、使用器具などでお困りの場合は受診していただくことが可能です。
教わることが前提だということは、メーカー自身の添付文書にも書かれています。ある再利用型カテーテルの添付文書の【禁忌・禁止】には、こうあります。
添付文書や規制当局はこう述べています
本品の使用方法に従うことが出来ないか、従うために他の者の助けが得られない患者には、使用させないこと。[指導に基づかない挿入は、出血や尿路感染の原因となる]
このページは、教わる内容が何かは書きません。誰が教えるかまでです。
紹介状なしで泌尿器科に行けることなど、受診の仕組みは受診するのページにまとめています。口に出して切り出すのが難しければ、医師に渡す一枚を代わりに渡すことができます。
医師が認めたあと、手に入れるまで
このページの残りは、人がうまくいかないと想像する部分です。用品を探し回り、窓口で説明し、そのたびに自分の名前を出さなければならない、というものです。実際には、たいていそうではありません。医師が同意したあとに続くのは事務で、日本ではその大半が診察室の中で済みます。
上に書いた二つのことが、供給が一回の買い物ではなく繰り返しの手配になる理由です。指針が標準とする単回使用のカテーテルは一度使って捨てるもので、[EAUN 2025] コーティングされていなければ潤滑剤も単回使用です。[EAUN 2025] つまり、一本を手に入れて終わりではありません。ジェルも含めて、決まった量を継続的に受け取る形に整えられるのです。[EAUN 2025]
日本の保険の仕組みでは、カテーテルは医療機関から支給されます
日本の公的医療保険では、自分で行う導尿は「在宅自己導尿」と呼ばれ、医科診療報酬点数表に「在宅自己導尿指導管理料」という項目があります。
C106 在宅自己導尿指導管理料 1,400点
その注には、在宅自己導尿を行っている入院中以外の患者に指導管理を行った場合に算定すること、カテーテルの費用は別の款の点数で算定することが書かれています。[診療報酬点数表] 厚生労働省の留意事項通知は、在宅自己導尿をこう定義しています。
在宅自己導尿とは、諸種の原因により自然排尿が困難な患者について、在宅での療養を行っている患者自らが実施する排尿法をいう。
同じ通知は、対象になる患者を限定して列挙しています。ここは注意深く読む場所です。
対象となる患者は、下記の患者のうち、残尿を伴う排尿困難を有する者であって在宅自己導尿を行うことが必要と医師が認めた者とする。 ア 諸種の原因による神経因性膀胱 イ 下部尿路通過障害(前立腺肥大症、前立腺癌、膀胱頸部硬化症、尿道狭窄等) ウ 腸管を利用した尿リザーバー造設術の術後
この列挙のどこにも、排尿恐怖症(paruresis)はありません。当サイトは、この条件に当たると示唆しません。ある人に当たるかどうかは、指導管理を行う医師と保険者が判断することです。
カテーテルそのものは、この仕組みでは医療機関が渡します。点数表には特殊カテーテル加算があり、在宅自己導尿を行っている入院中以外の患者に、再利用型カテーテルや「間歇導尿用ディスポーザブルカテーテル」などを使った場合に加算するとしています。[診療報酬点数表] 通知はその算定の条件をこう書いています。
在宅療養において在宅自己導尿が必要な患者に対し、療養上必要なカテーテルについて判断の上、必要かつ十分な量のカテーテルを患者に支給した場合に算定する。
「支給」です。在宅療養指導管理料の通則も、必要かつ十分な量の衛生材料や保険医療材料を支給した場合に算定するとしています。[厚労省 留意事項通知] つまり日本では、この仕組みの中でのカテーテルは、店で探すものではなく、指導を受けた医療機関から受け取るものです。
ここに書いた点数は、このページの確認日の時点で適用されている改定のものです。[厚労省 留意事項通知] 診療報酬は改定されるので、ページの下にある確認日を今日の日付と見比べてください。
飛行機に持ち込むとき、決まりが何を書き、何を書いていないかは、飛行機に乗るのページにあります。
ほかの国では
日本の外での入手経路について、当サイトが引用できる形で見つけたのは英国と米国の資料で、英語版のこのページに載せています。一般に言えるのは上の一行だけです。誰が処方できるかは、どこにいるかによります。[EAUN 2025]
用品を使い始めてから起きる、下の四つほど急がない普通の問題については、看護の指針は短く述べています。
問題が続く場合や合併症が起きた場合は、医師の診察を受けるべきである。
予約ではなく救急が必要な四つのこと
公衆トイレで出せず、家に帰ってから出せるのは、緊急事態ではありません。突然どこでも、家でも、まったく尿が出せなくなり、膀胱がいっぱいで痛いのは、緊急事態です。それは急性尿閉で、原因が何であれ、排尿恐怖症であっても、救急医療が必要です。[NIDDK]
カテーテルが通らない、抜けない、あるいは一部が体内に残った、というのが二つ目です。看護の指針は、その場合は専門医に、と書いています。
カテーテルが通せない場合は、泌尿器科医の助言を求めること
血尿が続く、あるいは尿道から出血している、というのが三つ目です。同じ指針は、目に見える著しい血尿を、そもそも導尿をしない理由の一覧に挙げています。[EAUN 2025]
四つ目は、導尿のあとの高熱や震えるような悪寒で、脇腹や背中の痛みの有無は問いません。それは上部尿路の感染が疑われる徴候です。
腎盂腎炎は、膀胱炎の典型的な症状の有無にかかわらず、発熱(38°C 超)、悪寒、側腹部痛、吐き気、嘔吐、または肋骨脊柱角の叩打痛がある場合に疑われる
急ぐ理由を、指針は示しています。
リスク因子を伴わない腎盂腎炎と、閉塞性腎盂腎炎のようにリスク因子を伴う腎盂腎炎とを、できるだけ早く区別することが極めて重要である。後者は急速に尿路性敗血症に至りうるからである。
このページの最終確認日:。
この一枚を医師に渡す