本文へ移動

飛行機に乗る

飛行機は、歩いて出ていけない場所で決まった時間を過ごすことです。列があり、薄い扉があり、待っている人がいます。予定表に日付が入っているなら、目の前の問題はこれです。

このページは、公表されている決まりをその言葉で引き、決まりがどこで途切れるかを書きます。先にふたつ。

どの決まりも、排尿恐怖症(paruresis)のことは書いていません。決まりが扱うのは、液体物、医薬品、安全阻害行為、安全バンドといった区分です。この状態を名指しした決まりはひとつもなく、以下のどれも、排尿恐怖症を理由に何かを与えてはくれません。この状態のある人がなぜ気にするのかは当サイト自身の読みで、引用できるものはありません。

空港の決まりは、国際線と国内線で違います。国内線には液体物の制限そのものがありません。下で航空局自身の言葉で書きます。

空港:持ち込みについて決まりが言っていること

まず、誰もが出会う制限からです。液体物の制限は、航空法施行規則に書かれています。

次に掲げる方法以外の方法により持ち込まれる液体(国際航空運送事業の用に供する危険物等所持制限区域内に持ち込まれるもの又は本邦内から出発して本邦外に到達する航行を行う航空機内に持ち込まれるものに限る。)……液体を容量百ミリリットル以下の容器に封入すること。……イの容器を再封入が可能な容量一リットル以下の透明なプラスチック製の袋に封入すること。……ロの透明なプラスチック製の袋の数は、旅客一人につき一つとすること。

[航空法施行規則 235 条の 4 の 8]

括弧の中が言っているのは、この制限が国際線に限られるということです。国土交通省航空局の案内は同じ制限を、すべての液体物を百ミリリットル以下の容器に入れる、と書き、[航空局 液体物持込制限 概要] 成田空港は、国際線では 100 ml を超える容器に入ったあらゆる液体物の機内への持ち込みが禁止されていると書いています。[成田空港 液体物の持ち込み制限]

国内線には、この制限はありません。航空局の「よくある質問」は、こう答えています。

国内線では、今回の液体物の制限は行われません。なお、液体物検査装置による検査など、通常の保安検査は実施されますのでご協力いただきますようお願いいたします。

[航空局 よくある質問]

羽田空港の国内線の出発案内も、ペットボトルや水筒などの液体物はトレイに載せて検査を受けるよう案内しているだけです。[羽田空港 国内線 出発手続き] 国内線に乗るなら、液体物について読むべき決まりはここで終わりです。保安検査そのものは行われます。

医薬品は、国際線でも制限の適用除外です。航空局の案内はこう書いています。

医薬品、ベビーミルク/ベビーフード、特別な制限食等については、適用除外です。

[航空局 液体物持込制限 概要]

機内で必要な量に限り適用除外となりますので、検査員まで申告願います。その際、医薬品については、処方箋の写し、薬袋、医師の診断書等の提示をお願いします。

[航空局 液体物持込制限 概要]

案内の言葉は「お願いします」で、見せるものとして処方箋の写し・薬袋・診断書を挙げています。成田空港の FAQ も、薬の機内持込は機内で使用する分に限られ、医薬品は液体物の量的制限の適用外だが保安検査は実施すると述べています。[成田空港 FAQ 医薬品] この制限は客室内に持ち込む手荷物についてのもので、受託手荷物には適用されません。[航空局 液体物持込制限 概要]

検査をするのは航空会社です。航空法は、何人も保安検査を受けた後でなければ航空機に搭乗してはならないと定め、[航空法 131 条の 2 の 5] 施行規則は、旅客の検査を行う者を、その旅客が搭乗しようとする航空機を運航する者としています。[航空法施行規則 235 条の 4 の 9] 成田空港も、日本では航空法に基づき保安検査は各航空会社により実施されていると書いています。[成田空港 液体物の持ち込み制限] だから、読む場所は航空会社のページになります。ANA は、服用中の薬や喘息用の噴霧式吸入薬を機内へ持ち込み・使用できると書き、[ANA 医薬品や医療用電子機器] インスリン注射などの自己注射器については事前申告や診断書の提示は必要なく、保安検査の際に自己注射器であることを知らせるよう求め、[ANA 医薬品や医療用電子機器] 国際線では処方薬について処方箋の写しや病名のわかる医師の診断書類の提示を求められる場合があると書いています。[ANA 国際線 手荷物]

医療機器について、日本の一次資料は見つかりませんでした。航空局、成田、羽田、ANA のどのページも、医薬品、自己注射器、医療用電子機器を名指ししてはいても、カテーテルを名指ししてはいません。「医療機器」という言葉を見出しに使うページはあっても、自己注射器と医療用電子機器のほかに医療機器を区分として扱った一文は、当サイトが読んだ日本のページにはありません。英国政府の手荷物の案内には、その区分があります。

医療機器(それが旅行に不可欠な場合)

[GOV.UK hand luggage rules]当サイト訳。

空港職員は、保安検査場で液体を検査するために容器を開ける必要がある場合がある。医療機器は別に検査される。

[GOV.UK hand luggage rules]当サイト訳。

これは英国の空港についての英国政府の言葉で、日本の空港には及びません。「別に」が何を意味するかは、英国の案内も書いていません。日本の案内が名指しするのは医薬品で、そこには処方箋の写し等の提示を求める一文が付いています。医療機器をどう扱うかは、日本の公表された決まりの中では空白です。

日本では、間欠導尿用のカテーテルは薬機法の管理医療機器に当たる製品で、添付文書にその区分が記されています。[PMDA 添付文書 間欠泌尿器用カテーテル] どこで手に入るか、本物かどうかをどう見分けるかは、本物のカテーテルと危ないものを見分けるにはのページにあります。

機内:機長の権限と、書かれていない扉

日本の便については航空法があり、機内の秩序を定めています。

航空機内にある者は、当該航空機の安全を害し、当該航空機内にあるその者以外の者若しくは財産に危害を及ぼし、当該航空機内の秩序を乱し、又は当該航空機内の規律に違反する行為(以下「安全阻害行為等」という。)をしてはならない。

[航空法 73 条の 3]

乗降口が閉ざされてから開かれるまでの間、機長は、安全阻害行為等をし、又はしようとしていると信ずるに足りる相当な理由がある者に対し、必要な限度で拘束その他の措置をとり、又は降機させることができます。[航空法 73 条の 4] 機長はまた、国土交通省令で定める行為をした者に、それを反復し、又は継続してはならない旨の命令をすることができます。その行為の例として法律が挙げるのは、乗降口や非常口の扉の開閉装置を正当な理由なく操作する行為、便所において喫煙する行為、乗務員の職務の執行を妨げる行為です。[航空法 73 条の 4] 施行規則の列挙には、離着陸時その他機長が安全バンドの装着を指示した場合に安全バンドを正当な理由なく装着しない行為が含まれています。[航空法施行規則 164 条の 16]

最後の項目は、二度読む価値があります。離着陸時は予定できます。「その他機長が安全バンドの装着を指示した場合」は、予定できません。

そして、一番大事なのは、法律が書いていないことです。航空法と施行規則が「便所」に触れるのは、それぞれ一か所、いずれも喫煙の文脈だけです。[航空法 73 条の 4][航空法施行規則 164 条の 16] 航空法にも施行規則にも、トイレをいつ使ってよいかについての決まりはありません。乗務員に誰かを助ける義務も、例外を設ける義務も、乗客の理由を他の人に言わない義務も、そこには書かれていません。安全バンドについては、機内で誰に権限があるかを法律は定めています。その扉については、何も定めていません。

「正当な理由」という言葉は、安全バンドの項目の中にあります。当サイトの読んだ範囲では、それが何を含むかを定めた規定も、排尿恐怖症をそれに当てはめた資料もありません。このページはそれを決めません。

二つの部屋がひとつの地平線の上に並んでいます。飛行機の客室の曲面の壁に付いた扉と、薄い仕切りの向こうで通路に並んで待つ人たちです。

客室の曲面の壁に付いた扉。その向こう側には飛行機の全部があって、歩いて出ていける場所はどこにもありません。

その扉の後ろの通路にできる列。部屋の中で起きることが聞こえるほど近く、あなたと同じように、飛行機を降りることはできません。

航空会社が公表していないこと

トイレの利用について、時間をかけて何度もトイレを使う必要のある乗客を客室乗務員がどう助けるかについて、長距離便の機体にトイレがいくつあるかについて、航空会社自身の公表された言葉を探しました。当サイトが読めた航空会社のサイトにあるのは、運送約款、手助けが必要な乗客への案内、機内の安全についてのページです。当サイトが読めた ANA のページは、医薬品、自己注射器、医療用電子機器を扱っていて、[ANA 医薬品や医療用電子機器][ANA 医薬品や医療用電子機器] そのどれも、上のことを書いていません。

だからこのページは、航空会社が何をしてくれるかについて何も言いません。読めたページのどれも、それを書いていないからです。どこかで自信のある答えを読んだなら、誰が言っているのか、何を根拠に言っているのかを見てください。

公表された答えがないことは、答えがないことと同じではありません。当サイトが読めた航空会社がそれを書いていない、というだけのことです。

ある団体が言っていること

英国の排尿恐怖症の支援団体 UK Paruresis Trust は、飛行機についてのページを公表しています。以下はその団体の立場で、その言葉です。臨床的な知見ではなく、研究が引かれているわけでもありません。

排尿恐怖症のある多くの人は、飛行機での移動、とりわけ長時間のフライトをどう乗り切るかについて、とても不安に感じている。しかし、少しの事前の計画と、自分の不安を引き起こすものについての理解があれば、快適に飛行機に乗ることは可能である。

[UKPT]当サイト訳。

同じページは、当サイトより先まで行きます。カテーテルを出してもらうために医師に使う言葉を提案し、誰が使い方を教えてくれるかを書いています。当サイトは、症状をどんな言葉で説明するかを誰にも言わず、いかなる手技も載せません。

搭乗の前に

この問題には、空港の列ではなく、搭乗の何週間も前の診察室で取り組む形があります。このページのどれも、治療ではなく、その代わりにもなりません。

飛行機のために人が持っていくもののうち、ふたつに一言。ひとつは耳の圧のための鼻づまりの薬で、プソイドエフェドリンはそのひとつです。もうひとつは夜の便で眠るための眠気を起こす抗ヒスタミン薬で、クロルフェニラミンはそのひとつです。どちらも、排尿恐怖症のためにここにあるのではありません。英国の NHS がそれらと排尿について書いていることのためにあります。NHS は、排尿や膀胱を空にすることに問題がある人に、クロルフェニラミンを飲む前に医師か薬剤師に伝えるよう書き、[NHS, chlorphenamine] 眠気を起こす抗ヒスタミン薬の副作用に排尿の困難を挙げ、[NHS, antihistamines] プソイドエフェドリンを飲む前に薬剤師か医師に伝えるべきことの中に、排尿の困難を引き起こすと同じページが書く前立腺肥大を置いています。[NHS, pseudoephedrine] どのページもこの状態には触れていません。書かれたとおりに読むなら、こうです。飛行機のために人が飲むふたつの薬に、それぞれ排尿についての注意があり、どちらを持っていくかを聞く相手は薬剤師です。

飛行機の前に水を控えるのは誰もが思いつくことで、この状態のある人の多くは、意識せずにそうしています。公表されているものは、ふたつとも逆を向いています。四時間以上の移動について、NHS の血栓を防ぐための助言は、水を十分に飲み、アルコールを避け、できるときに歩き回ることです。[NHS, DVT] 世界保健機関(WHO)の旅行と血栓についての研究プロジェクトは、考えられる機内の要因に低い湿度と脱水を挙げ、[WHO WRIGHT 2007] そのうえで、長距離便のあとのリスクの上昇は「主として長時間の不動による」と結論しました。[WHO WRIGHT 2007] つまり公表された助言は飲んで動くことで、リスクの主因は座ったままでいることに置かれています。どちらの資料も、膀胱については一言も書いていません。どれだけ、いつ飲むかは、このページの他のすべてと同じく、診察室で話すことです。

その会話を始めるのが難しいなら、医師に渡す一枚は、最初の一文を自分で探す代わりに机の向こうへ渡せる一枚です。飛行機のほかにも控えている場面があるなら、場面別のページにあります。

このページの最終確認日:。

この一枚を医師に渡す